なぜ人は「分からないもの」を丸投げして失敗するのか

結論

人が「分からないもの」を丸投げして失敗する一番の理由は、
理解するコストから逃げるために“信用”してしまうからです。

信用した瞬間、判断を止めます。
そして判断を止めた時点で、その結果の責任だけが静かに自分に残ります。

これは性格の問題ではありません。
ほとんどの人が、ほとんどの場面で、同じことをしています。


なぜそう言えるか

「分からないもの」に直面したとき、人の頭の中では、だいたいこういう計算が走っています。

  • 調べて理解するのは時間がかかる
  • でも失敗はしたくない
  • だから「正しそうな何か」に任せたい

これは怠慢というより、理解コストの問題です。
仕事も生活も情報量が多すぎて、すべてを自分で理解するのは現実的ではない。

だから人は、「考えなくてよさそうな選択肢」を探します。
次のようなものに飛びついていませんか?

  • 専門家っぽい人
  • 多数派の意見
  • 有名なサービス
  • AIという存在

これらに共通しているのは、
自分で判断しなくても“正しい側にいられそう”な雰囲気です。

ここが重要なポイントで、
人は「正しいかどうか」よりも先に、
「安心できるかどうか」で判断を決めてしまいます。

でもそれは安心であって、安全ではありません。

安心は感情です。
安全は構造です。

構造を理解しないまま任せると、
何か起きたときに「なぜそうなったか」が一切分からず、
修正もできません。

つまり、
失敗そのものより、「失敗を解釈できない状態」が一番危険ということです。


実際の例・失敗例

例1:生成AIを信用しすぎた話

生成AI(文章や回答を自動で作るAI)を使い始めたとき、
私は仕組みをほとんど理解しないまま、
「とりあえず賢い答えが出るもの」と思って使っていました。

結果どうなったか。

  • もっともらしい嘘(ハルシネーション)に何度も振り回される
  • 最新情報だと思っていたら、普通に古い
  • 自分で調べる癖が減り、同僚よりキャッチアップが遅れる

最初は「AIの精度がまだ低いからだ」と思っていました。
AIの精度を上げる工夫をしたり、最新のモデルに飛びついたり。
でも今振り返ると、問題はそこではありません。

文章を作るAIは、
「正しいこと」を保証する機械ではなく、
「それっぽい文章」を作る機械です。

つまり、事実を調べる道具ではなく、
言葉を並べる道具。

そこを理解せずに、
「賢い存在」「調べ物をしてくれる存在」として扱った瞬間、
私は判断をAIに丸ごと渡していました。

出力だけを見て、仕組みを見ていなかった。
だから間違いに気づけなかった。

AIが嘘をついたのではなく、
自分が「何をしてくれる道具か」を確認せずに使っただけです。


例2:積み立てNISAでS&P500に全振りした話

積み立てNISA(少額で投資を積み立てられる制度)を始めたときも同じ構造でした。

ネットを見ると、

  • とりあえずS&P500
  • 長期なら負けない
  • みんなやってる

そんな情報ばかり出てくる。
中身をほとんど理解しないまま、
「有名だし正解っぽい」で全部突っ込みました。

結果、トランプショックで一時的に含み損。
みるみる資産が減っていく恐怖を今でも憶えています。

損したこと自体よりも問題だったのは、
下がった理由も、リスクの正体も、何も説明できなかったことです。

価格が下がったとき、
「まあ長期だから大丈夫らしい」という言葉しか出てこなかった。

これは投資していたんじゃなくて、
判断をネットに外注していただけでした。

ここでも同じです。

出力(ランキング・おすすめ・人気)だけ見て、
仕組み(どんなリスクを持つか、どんな局面で弱いか)を見ていなかった。

だから不安になっても、
「自分で考える材料」が手元に何もなかった。


丸投げが起きる構造

ここまでの2つの例は、分野は違いますが、構造は同じです。

  1. 分からないものに出会う
  2. 調べるのは面倒
  3. 正しそうなものを見つける
  4. 出力だけ見て安心する
  5. 判断を止める

この時点で起きているのは、
「間違った選択」ではありません。

**「選択そのものを放棄している状態」**です。

だから後から失敗しても、

  • なぜそうなったのか分からない
  • どこを直せばいいか分からない
  • 次に同じことが起きる

というループに入ります。

丸投げの本当のリスクは、
損をすることではなく、
学習できなくなることです。


判断軸(ここが一番重要)

「分からないもの」を使うとき、
最低限これだけは自分で考えてください。

  • その仕組みで「何ができて、何ができないか」を考える
  • 失敗したときに「なぜ失敗したか説明できるか」を考える
  • 自分がどこまで責任を持つか決める

全部理解する必要はありません。
専門家になる必要もありません。

でも、

「これはどう間違うのか」
「どんな前提が崩れると危険か」

この2つを一切知らないまま使うのは、
ほぼ確実にどこかで事故ります。


読者が次に取る行動(1つだけ)

今あなたが「なんとなく使っているもの」を1つ選んで、
その道具が“どう間違えるか”を1つだけ調べてください。

AIでも、投資でも、保険でも、サブスクでも何でもいい。

  • どんなときに誤るのか
  • どんな前提が崩れると危険か

これが1つ分かるだけで、
あなたはもう「丸投げしている側」ではありません。


分からないまま任せると、楽です。
考えなくていいし、不安も一時的に消えます。

でも、自分で決められない状態が一番リスクが高い。

問題は「失敗すること」ではありません。

なぜ失敗したのかを説明できない状態のまま、
使い続けてしまうこと
です。

あなたが今使っているものの中で、
「もし失敗したら、理由を説明できないもの」はどれでしょうか。

それが、今いちばん危険なブラックボックスです。

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